はじめに
2025年10月、ラスベガスで開催された「SuiteWorld 2025」で、Oracle NetSuiteが次世代のNetSuite体験として 「NetSuite Next」 を発表しました。
Oracle日本法人のニュースリリースでは、「対話型AIとエージェント型ワークフローをスイート全体に組み込み、AIによるビジネス変革を実現する次世代NetSuite」と位置付けられています。
本ブログでは、公式発表をもとに、
- NetSuite Nextとは何か
- どのような新機能が追加されるのか
- 日本企業にとってどんな意味があるのか
を整理してみます!
NetSuite Nextとは何か
一言で言うと、NetSuite Nextは「NetSuiteの新バージョン」ではなく、「AIを中核にした新しい利用モード」です。
Oracleの公式説明では、NetSuite Nextは以下のように定義されています。
- 対話型AI(会話型インターフェース)
- エージェント型ワークフロー(AIが自律・半自律で業務を進めるワークフロー)
- 自然言語検索・分析
- 信頼性・説明可能性・監査可能性を備えたAI
- Oracle Redwood Design System による新しいUI
- Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上で提供されるスケーラブルな基盤
特に重要なのは、「今のNetSuiteを捨てて新しいシステムに移行する」のではなく、現在のNetSuiteに“Nextモード”をオンにするイメージである点です。
「お客様は、既存のカスタマイズを移行したり中断したりすることなく、ボタン一つで『NetSuite Next』へ切り替えることができます」
既存のロール/権限/ポリシーはそのまま引き継がれた上で、AIがその上に載ってくる設計になっています。
どのような新機能が追加されるのか
1. 会話型AIアシスタント「Ask Oracle」
- 自然言語(日本語を含む想定)で「◯月の売上トレンドを教えて」「この顧客の回収状況は?」と質問
- 保存検索やレポートを意識せずに、検索・集計・グラフ表示・ドリルダウンまで実行
2. 「AI Canvas」によるコラボレーション・ワークスペース
- 1つの画面上で、人とAIが一緒に「分析・シミュレーション・対策検討」
- そのままエージェント型ワークフローの起動(例:督促フローや支払条件変更)までつなげられるイメージ
3. エージェント型ワークフロー
- 支払提案・ベンダー選定・照合・サプライチェーン運用などを、AIエージェントが主導
- 「AIが提案 → 人が承認」や「一定ルール内なら自動実行」など、任せ方を調整可能
4. ナラティブ・サマリー&自動インサイト
- レポートやトランザクションに対して、AIが文章で要約・気付き(インサイト)を提示
- 「なぜこの数字になっているのか」「どこがリスク・チャンスか」を自動で教えてくれる
5. ドキュメント&ナレッジとの統合
- 請求書・契約書・発注書・規程集・PDFなどのドキュメントをAIが読み取り
- NetSuiteの取引データやワークフローと紐づけて、入力補助・チェック・例外検知に活用
日本企業にとってどんな意味があるのか
1. 「保存検索」機能の開発者頼みの世界から脱却
- これまでは「検索・レポートを組める人」と「結果を見る人」が分かれていた
- Ask Oracleで、現場担当者でも「自分の言葉で聞いて、自分で分析できる」方向にシフト
2. 決算・債権債務まわりの“締め作業”短縮
- エージェント型ワークフローにより、
- 売掛・買掛の照合
- 支払・回収のスケジューリング
- 決算調整に向けた下準備
などをAIが事前整理してくれる可能性
- 「エクセル前提」の決算プロセスを見直すきっかけになりやすい
3. 購買・サプライチェーン業務の高度化
- ベンダー選定、補充提案、支払条件の検討などで、
過去実績・リードタイム・品質・与信などを加味したAI提案が受けられる - 調達・在庫・資金繰りを一体で考える“参謀”的な使い方がしやすくなる
4. 「AI前提」で業務とデータを設計し直すタイミング
- データ品質(マスタ・コード体系・セグメント)が悪いと、AIも十分に力を発揮できない
- 今後数年を見据えて、
- マスタ整備
- 与信や決済条件ルールの整理
- ワークフロー/スクリプトの棚卸し
をしておくと、NetSuite Nextを活かしやすくなる
5. 人の役割の変化(“入力する人”から“判断・レビューする人”へ)
- 仕訳や伝票を1件ずつ「作る・入力する」作業はどんどん自動化される方向
- 経理・財務・SCM・営業管理は、
- AIの提案をレビューし
- 例外ケース・ルール設計・経営判断に集中する
という役割にシフトしていく可能性が高い
まとめ
NetSuite Nextは、単なるERPのバージョンアップではなく、**「AIを前提としたNetSuiteの新しい使い方」**を提示するコンセプトだと言えます。
Ask Oracleによる会話型インターフェース、AI Canvas、エージェント型ワークフロー、ナラティブ・サマリーなどによって、「探す・分析する・判断する・動く」という一連の流れが、これまでよりもシームレスに、そして自動化された形で実現されていきます。
日本企業にとっては、
- 保存検索やエクセル前提のレポート作りからの脱却
- 決算・債権債務・購買・サプライチェーンといった業務の高度化
- 「AIが活きる前提」としてのデータ品質・業務プロセスの見直し
といったテーマに、今から向き合う大きなきっかけになるはずです。
NetSuite Nextの提供開始はまず海外からとなりますが、いつきてもすぐ対応できる状態にしておくことが、これから数年のNetSuite活用・ERP戦略を左右していくポイントになるのではないかと考えております。
NetSuiteのご相談は是非Coznetまで。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

